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転移と反復、そして「照らし返す」こと
今回は少し専門的なお話しをします。
リズムは看護師、作業療法士といった医療専門職がスタッフにいます。
リズムのコンセプトも、医療と労働分野のそれぞれの専門性を生かし結びつけることをひとつのの目標としています。
「でも、やってることは他の事業所と一緒じゃない?」
と言われることもあります。
絵を描く、音楽を楽しむ、などのプログラムを見て、「働く練習もしないで遊んでいるんじゃないの?」と思われることもあると思います。
リズム開設当初、なかなか就職者が出なかったときは「リズムに通っても就職できないよ」と言う声を関係機関から漏れ聞いたこともあります。
それでも、信じて見失わないようにしてきたのは恩師ともいえる医師から教えていただいた言葉と考え方でした。
ひとつは「ウィニコットの理論」
リズムの母体、株式会社ウォームブランケットの理念である
“ 地域社会の「ライナスの毛布(ウォームブランケット)」になる ”
という言葉も「ライナスの毛布」に象徴される、人が成長して社会的存在になるまでの発達過程を温かみをもって説明したウィニコットの理論を基にしています。
ウィニコットが提唱した「発達促進的な」環境や関わり方を実践するのがリズムのプログラムの目指すものです。
もうひとつは恩師の大好きだったジブリアニメ「千と千尋の神隠し」
湯屋で働くことで自分の中にある生命力を手にしていった千尋は、その後「私の世界」である温かな銭婆の家に行きハクと再会します。
「働くこと」と「遊ぶこと」、「社会的な私」と「私的な私」という二層構造のそれぞれが大切であること、
「私たちの世界はこうしてできている!」とあの映画は示しているのだ
と強く語った恩師の言葉が今もはっきりと耳に響きます。
ですから、リズムのプログラムは「働く練習」「辛い訓練」だけでなく、「楽しみを持つこと」「満ち足りた安心を感じること」の機会の両方を用意しています。
「仕事の練習」と「心の豊かさを増やす機会」は原則半分ずつプログラムしています、と初めての方には説明しています。
リズムの本質は「目には見えない」部分にあります。
それがタイトルにもある「転移と反復」、「照らし返すこと」です。
どちらも精神分析理論の用語です。「転移と反復」はフロイトが、「照らし返すこと」はウィニコットが用いました。
どちらも説明すると難しい概念ですが、ざっくりと単純化して説明すると以下のようになります。
「転移と反復」:人は過去にあった重要なことを言葉で説明する代わりに行動で再現する
リズムの空間は間仕切りのないワンフロアになっています。プログラムも自由度の高いものが多くなっています。これは他者との関わる機会を多くし、自分で判断して行動する機会を増やすために意図的にそうしてあります。利用者さんは自由度の高い環境が苦手な人もいると思います。しかし、その環境が「転移と反復」を知る機会となります。対人関係や判断が必要な場面が多いと必然的に「その人のパターン」が出やすくなります。それは過去の経験の中で「こだわっていること」であったり、うまくいかなかったことの再現である場合に「転移」、そしてそれをくり返すことを「反復」と捉えます。
分かりやすい例を挙げれば、人間関係を苦手に思っている人がリズムでも人間関係に悩む、なかなか自信の持てない人がプログラムの中でやはり自信を失くしてしまう、などの事柄です。そして多くの場合「くり返されるパターン」はその人の過去の経験の何かをパターン化した行動によって代弁しているのです。
こうした「再現の機会」にスタッフは細心の注意を払っています。マイナスのパターンであればそこから抜け出せるように「その時」を見計らって助言という介入をします。でもそれは大きな心の力が方向を変えられる、正に「その時」である必要があります。
もうひとつの概念「照らし返すこと」は本人の姿と行動を「鏡のように照らし返す」存在としてスタッフが機能することと説明されます。
本人が気づいていない自分の行動の意味、あるいは本人の「良い部分」を本人に代わって見つけ出し「照らし返す」ことにより、人は自分を再発見します。
安定した就労のためには「自己理解」が重要だと一般的に言われていますが、「自己理解」を深めるためには自分の姿を「照らし返してくれる」鏡の存在が不可欠なのです。
本人と様々なプログラムを行うなかで「パターンを見つけ、その理由を知り、照らし返す」、それがその人の成長と自己理解、そして「自分を大切にすること」につながるように、
「私たちは、常に温かみを持ち、人に寄り添い、安心と希望を提供する」
ようになりたいと心がけています。
目には見えない、でも人と人との関わりのなかに必ず存在するもの、をリズムは大切にしています。